あたたかな雨



「あ、気付いてなかったかな? 僕も乙原さんと同じ図書委員会なんだ」

「あっ、そうなんだ……」

「僕は陸奥義樹(みちのく・よしき)。字は陸っていう字に奥って書いて、みちのくって読むんだ。よろしくね」


そういえば、陸奥という苗字をどこかで見た気がする。

でも、委員会のときも彼を見たことはなかった。

何故かはわからなかったが、聞けそうな雰囲気でもなかった。

それよりと、彼が言葉を付け足した。


「傘、いらないの?」

「え、いや……そうしたら陸奥くんの傘なくなっちゃうし」

「そんなの気にしなくていいよ。それに、寒くて震えてる子を置いて僕だけいけないよ」

「あっ……」


気付いたら私の肩は微かに震えていた。

確かに寒いという感覚はしたけど、震えてるなんて。

全然気付かなかった自分に呆れて溜息が出そうだった。