私を見るなり陸奥くんは破顔した。
嬉しそうな顔が次第に近づく度に、なんだか緊張してきてしまう。
昨日とは違う気持ちの変化に焦った。
「昨日は、ありがとう」
「どういたしまして」
「これ……傘。本当に助かったよ」
「乙原さんが濡れなくてよかったよ」
まるで、春の草原みたいに爽やかな顔をする彼に、見惚れてしまいそうだった。
「それでね。何か恩返しできればいいなーと思うんだけど……何かあるかな?」
「別にいいよ。僕がしたくてやったわけだし」
「でも、それだと私が許せないというか……」
私のために、陸奥くんは雨の中帰ったんだ。
絶対に何か返したかった。
