どちらかというと俯き加減に道を進むと、大きな木に行き止まった。
ふたつの道の分かれ道だ。
立ち止まり、それとなしに陸奥くんの顔を見遣ると、既に彼はこちらを見ていた。
視線が絡まるのは、学校から出る以来だった。
端正なその顔に見つめられると、顔から火が出る思いだった。
「乙原さん、右の道だよね?」
「うん。そうだよ」
「そっか。じゃあ、ちょっとこれ持って」
「え……?」
陸奥くんが右手に持っている傘を、私の手に渡す。
どういうことなんだろう。
よくわからなくて、陸奥くんの顔を見ると、いたずらっぽく笑う。
彼が自分の鞄を肩に掛けなおすと、私の肩をぽんと触った。
