蜃気楼。

その笑顔は、
どこかはかなくて、辛そうで、
そこしれない悲しさを秘めている、
ように見えた。

まぁ、俺の勝手な推測だけど。
ま、違うだろっ。

「尽は、まだ誰とも付き合った事ないのよねー。」

ニコニコと笑う母さん。

「るせっ。」

母さんは、知らないだけだ。
俺だって人並の恋愛はしてきて、
苦い思いでだっていっぱいある。
思い出したくないことだって。

「意外です。」

やっと口を開いた結川真央。
高く綺麗な声は
消えそうで、儚い。
けど、空気のようにすんなり耳に入ってくる。

「なにがぁ??」

苺にぷすり、とフォークを突き刺し
大きな口を開けて食べる母さん。

「あの、彼女いらっしゃらないって。」

おずおずと、口にする結川真央。

「んふ。尽もまだまだ子供よねぇ。」

ねぇーっと、俺に同意を求める母さん。
ってか出た!!んふ。2回目だし。

シカトして出された紅茶をすする。

っとぉ。

「甘くね!?」