奴隷船となんら変わらない。そんな境遇で日本に運ばれてきたメイ。





メイに“Amazing Grace”のことを教えてやると、どんな思いを馳(は)せるのだろうか?








船の中で揺られていた17歳のメイの姿を想像してみた。



胸に上手く言い表せない痞(つかえ)が宿った。







たどり着いた見知らぬ港で、掴んだ小さな幸せを、目の前で殺されたメイの気持ちを想像してみた。



心の中に電流が走ったみたいに“痛む”ってカンジがした。











信号が青に変わった。





老婆は横断歩道を渡りきっていた。






俺は左手でサイドブレーキを戻した。






メイは老婆へ目を向けながら、俺の左手に右手で握り締めてきた。







 ……まるで俺の心が見えているように、強く握った。







それで、俺の“痛む”ってカンジが少し消えたのが分かった。














……なんて、どれもこれも、殺し屋“らしくないぜ”









だけど、俺は嘲笑しなかった。