シルバーウルフ -Is this love?-

誰も歌わない“Amazing Grace”の演奏が終わった。



「許してね……。ごめんなさいね。」





……一瞬だった。



女はカウンターの中の包丁を両手で持った。一気に自分の喉元を突き刺した。



「待て!!」

俺の声の方が遅かった。



喉元から陰鬱(いんうつ)のような赤が舞った。



未練が滲むような瞳を俺に向けた。



その瞳から……、心残りを表すような透明な涙が流れていた。




女は前つんのめりに倒れた。



俺はカウンターを飛び越えた。



床に倒れた女を抱き抱(かか)えた。



赤に染まった右手を俺に差し出した女。



俺がその右手に目をやった瞬間……



電池が切れたように崩れ落ちた。



それは女の脈拍数がゼロになったことを示していた。