「で……、トカレフ野郎。お前は約束通りになぶり殺す。」


振り向いたらトカレフチャイニーズは、涙と鼻水で顔を洪水させている。


リボルバーの銃口を向ける。


両手を合わせて祈るトカレフチャイニーズ。


「悪りぃな。俺、悪魔に選ばれし男なんだ。俺がいちばん嫌いなパフォーマンスが、その祈りのポーズだ。このボケナス。」


右の二の腕に1発。

左の二の腕にもう1発。


弾をブチ込んでやったら、いかがわしいポーズは消えた。



「あと、神はいねぇよ。」



お返しっていうとクールな俺らしくないけど……。


だけど、さっき俺が撃たれた眉間と左肩と土手っ腹に1発ずつを命中させた。


神に足を向けるかのように、真後ろに倒れるトカレフチャイニーズ。



俺は妙に眠くなってアクビが出た。



もう、用事のない無人のカジノを出た。


さっきの便所の横にある給湯室。


ガスの配管をリボルバーを叩きつけてへし折った。



屋内階段を降りて、雑居ビルから外に出た。


肌寒い風に包まれる。


銀色の髪がなびいた。



2階を見上げる。


リボルバーの銃口をそこへ狙いを定めた。


“ボルト”ってミドルネームか?ファーストネームか?


妙に気になりながら、引き金を弾いた。



爆発音と共に炎が上がる。


砕け散るガラスの破片。



ノー天気な通行人の悲鳴。


集まる写メ好きの野次馬。


俺は背中が血で濡れたジャケットを脱ぎ捨てた。


人の群れに紛れて消えようとした時……



また、いつもの視線を感じた。


でも、振り向かずに進んだ。