まぁ君、帰ってこないしぃ…



担任と出ていったまぁ君は授業が始まっても教室に戻ってこない。


クルクルと指先でお気に入りのピンクのシャーペンを回しながら何気なく外を見ると…



アレって確か、生徒会長?一緒にいるのは誰だろう?


緩い巻き髪を揺らしながら生徒会長に手をひかれているのは―――



―――ッ!!



ガタンッ


「先生!」



目に映る人物が特定出来た時は既に立ち上がっていた。



「どうした?宝生、」



教室中の視線が一気に集まるのを感じて顔が熱くなったけど、そんなのはお構い無しに



「ちょっとお腹痛くて、保健室で休んできます」


「そうか、大丈夫か?」


「ぁ…っと、大丈夫です」


大袈裟に眉を潜めてお腹を擦る素振りを見せると担当教師は「行ってこい」と私を見送った。



三階から二階までは歩いて、ソコからはダッシュして、

さっきの進行方向から推測するなら行き先は…




―――音楽室。


あの後ろ姿は音楽の担当教諭の《静江先生》だと思う。



なんとなく嫌な感じがする。
寒いような、暑いような、
全身にビリビリとした弱い電流が流れている感じ


この感覚は覚えがある。

私が鈴が何か良くない事に遭遇する時の感覚。


ただソレがどちらに降りかかるのかは分からないのだけど…




音楽室前…


特別教室棟は他の場所よりも静かで授業が無いと怖い位にシンとしている。


ペタペタと歩く自分の足音さへも恐怖を煽る材料で、私は極力足音を発てない様に歩く。




「………でしょ?…じゃないのよ」


「………ですよ。………だし、………だから…」



確かに男の人と女の人の会話らしきモノが聞こえてくるのだけど、何を話しているのかは分からない。

それは音楽室ではなくて、準備室からきこえてくる。


準備室の入口には硝子窓があるのだけど、今はクリーム色のカーテンが引かれていて中は見えない。



でも、中の人物の特定は出来ている。