「鈴、何かあった?」

「何かって何ですか?」


クルクルと指先にあたしの髪を巻き付けながら御堂先輩は笑っている。


この顔は何か知ってる顔だ…



「無意味にくっつかないでください。ってか、知ってて聞くとかなんか嫌な感じです」

「ククッ、冷たいなぁ」


近くのパイプ椅子に移動する御堂先輩は今日も飄々としていて、


「剣道部に絡まれたんです。部費を上げろって!」
「鈴サン、好きです。の間違いじゃないの?」

「違いますよ!彼氏に頼んでくれって言われましたよ!偽彼氏さん」


キッと先輩を睨み付けてから「承認印お願いします」と手元の書類を押し付けると先輩は肩を竦めて書類を受け取った。


「だいたい、なんでいっつもあたしが先輩と二人で活動してんですか!副会長とか秘書の人とかいるじゃないですか!」

「はは…鈴、朝から荒れてるねぇ♪」



バンッと机を叩く。

だいたい、ああゆう事からあたしを守るとかほざいたのは目の前のこの男だったではないか。

なのに実際そうなった時に出てきたのは藍の王子様のエンで…



「先輩、今朝ドコ行ってたんですか?」



あたしと別行動になってからエンと登校したハズの先輩が生徒会室に現れたのは今日提出する書類が何枚か終わってからだった。



「お呼び出し」

「はぃ?」

「まぁ、生徒会長様にはいろいろと用事があるのです」

「はぁ?」


承認印を押した書類をあたしに渡しながらニヤリと笑って


「もう予鈴鳴るよ?」



肩に紺色の指定バックかけた先輩は壁に掛けられた時計を指差す。


「ヤッバ!とにかく、この書類はあたしダケじゃ片付きませんからね!他のメンバーにもお願いしますね!」


バンッと机を叩いて立ち上がるあたしを先輩は相変わらずカラッカラの余裕の笑顔で見ていた。