キスってどんなモノかなって思ってた。

甘いコットンキャンディーみたいな味がするのかな?とか
したとたんにに相手の気持ちが流れてくるのかな?とか
身体中がふわふわしちゃうのかな?

なんてヘルヘンな期待をしていたのだけど…


唇からするのはポテトチップスにまとわりついていたザラザラしたコンソメパウダーの匂い。
今しがたまぁ君が食べていたポテトチップスの味だった。

柔らかい唇の感触は残っているけど、恋愛小説みたいな感情や感覚はなかった。


ふーん、こんなもんか…


ペロッと自分の唇を舐めると口内に広がるコンソメパウダーの味。

耳まで真っ赤なまぁ君がやけに可愛い、なんだか面白い。


クスッ


この余裕はなんだろう?

こみあげてくる笑いを笑顔に変えて私はまぁ君に刷りよった。


「…藍?」

「好きなの、私はまぁ君が好き」


キスするより告白に緊張するなんて思わなかった。
ギュッと目をつむって俯く。
ふわりと頭に手をのせられる感覚に目を開けると、眉毛をハの字に下げて困った顔をしたまぁ君がいた。


「まぁ…くん?」

「知ってた」


ゆっくり吐き出された言葉に息をのむ。


「じゃあ…私と」

「でも、ゴメンな、俺…!」


続きを言われる前にもう一度唇を押し当てた。

知ってる、私は続きを知ってる。
そして、私は狡い。



「わかったよ、じゃあ、今の告白はなかった事にして?」

「え?」


胸のズキズキとした痛みは失恋のせいだろうか?
それとも…罪悪感だろうか?

黒く黒く、漆黒に染まる自分を感じながら


「私、諦めるから約束して?私と鈴、ずっと同じだけ好きでいるって…」

「なっ…藍―」

「ね?約束して?」


ギュッとまぁ君の手を握って懇願する(フリをする)。


呪縛の言葉を遺して…


「ずっと私達は仲良し幼馴染みでいてね」


『幼馴染み』そして『私達』―――

優しいまぁ君だから、私を裏切れないでしょ?


…ねぇ、まぁ君?