あぁ、私は泣きたいときに泣くこともできないのか。

そう思ったとき、

『わぁっ』

という歓声と共にこちらに向かって飛んできた巨大なビニールボール!

!!!

驚く私の真正面に飛んで来たボールを私はとっさに交わした。

ここで顔面衝突は猛烈に恥ずかしい。

いや、そんなことよりも涙をこらえていた顔を注目されることの方が恥ずかしい。

やはり、ここは涙を流すには相応しくない場所だから。


『泣ナカナイデ』


指示どおりの任務を遂行し、満足げにシッポで立ち泳ぎをするカレが言った。

否。
言ったような気がした。

驚きのために一瞬引っ込んだ涙は、心を見透かされた衝撃でまた滲み出すのだ。