仔犬……のような男の子は、ひょこひょこと後ろをついてくる。
この子の可愛さに負け、つい一泊を許可してしまったが。
正体どころか名前も年齢も知らないな。
「君……名前は?」
「僕の名前…?」
「うん」
そう質問すると、仔犬は少しだけ…ほんの少しだけ 悲しそうな顔をした。
…私はそれに気付かないフリをした。
「僕……名前ないの」
「名前がない? もしかして記憶喪失なの!?」
「ううん、そんなんじゃない。
名前は…捨てたんだ」
捨てた…?
「………」
疑問が次々と浮かんできて、言葉がつまった。
だけど仔犬は気にせず続けた。
「だから、おねーさん
僕に名前つけて?」
「え、私が?」
突然 何を言い出すんだ、この子は。
それから言葉の最後に疑問符をつけるなんて技を、使いこなすのは卑怯だと思う。
のは私だけか。
「うん、お願い!」
「…じゃあ……」
名前、と言われても
すぐには思いつかない。
歩きながらしばらく考える。
コンビニに着き、中に入ろうとした時。
「あ、ねぇ思いついた」
「なになに?」
仔犬はわくわくした表情でこっちを向いた。

