(勇次)「ほれ、後ろ乗れ」



勇次が自転車にまたがり、荷台に手を叩いてさくらを呼ぶが、

そのさくらは、いかにも嫌そうな顔で荷台を見つめるのだ。



(さくら)「……自転車の荷台って、お尻が痛くなるのよね…」



(勇次)「それが嫌なら自分で自転車に乗れるようになれよ」



(さくら)「うるさいわね!! 乗れないわけじゃないわよ!! 足が届かないのよ足が!!」



田村家から出かける時に、さくらは勇次の自転車にまたがってみたのだが、下のペダルまで足が届かず、とても動かせる状態ではなかった。


「じゃあ、一番下までサドルを下げればいいじゃん」


などと、皆思いだろうが、

勇次の自転車は、長年サドルの位置を変えていなかったため、ネジが錆び付いて動かないのだ。


ちなみに、

さくらのみすぼらしい姿を見た勇次が、「お前身長いくつだ?」と聞いたところ、

間髪いれず右ストレートが飛んできたことは、言うまでもない、



とまあそんなこんなで、話は華顔神社に戻る。

ムッと頬を膨らませながら、荷台に座り込むさくらを確認した勇次は、自転車を走り出した。

だが、それと同時にさくらの愚痴も走り出すのだった。



(さくら)「全く!! 何で私がお尻を痛めながら「元の世界に帰る方法」を探さなきゃ行けないの!? そもそも何で私はこの世界に来ちゃったの!? 私が何か悪いことした!?」



(勇次)「イライラすんなよ…」



(さくら)「あぁぁ!!ムカつく~!! アンタもアンタよ!! 同情してるなら、ちゃんと「資料集め」手伝ってよ!!」



(勇次)「何言ってんだ、「資料集め」なら毎日手伝ってんだろ」



確かに、勇次は学校が終わってからそのまま図書館へ向かい、さくらと一緒に情報を集めている。

文句を言われる筋合いはない、



(さくら)「そのわりには情報が頭の中に入ってないようね?」



(勇次)「そ、そんなことねぇよ!!」



(さくら)「アンタ、声が裏返って…」



(勇次)「あっ、段差があるぞ」

‐ガタンッ!!‐

(さくら)「ギャッ!!」



いいタイミングで段差にさしかかり、その衝撃でさくらは強く尻を打ってしまった。



(さくら)「っいたぁ~… アンタ!! 今のワザとでしょ!?」



(勇次)「ち、ちげぇよ」



(さくら)「ウソよ!! 絶対ワザと!!」



(勇次)「だから違うって、ほらまた…」



(さくら)「ちょっ!! まっ…」

‐ガダンッ!!‐

(さくら)「むぎゃッ!!」







尻を打ちつつ、ばらくして二人は田村家に着いた、



(さくら)「お尻がイターイ!!」



と同時に、さくらが叫んだ。



(勇次)「そうか、そりゃ大変だ」



(さくら)「なに他人のフリしてるのよ!! アンタのせいでしょ!! アンタの!!」



(勇次)「しょうがねぇだろ、段差を避ける術なんかねぇんだから」