そんなことがあったとは知らず、しばらくして、服を着替え終えた鏡子が寝室から出て来た。



(鏡子)「さぁ!! 二人とも行くわよ…って、勇ちゃんどうしたの?」



鏡子が見たものは、

床にうつ伏せで倒れ、痙攣している勇次と、

そんな勇次に背を向け、両手を上げてガッツポーズをしているさくらだった。



(鏡子)「さくらちゃんスゴーイ!! 男の子をKOにするなんて!!」



鏡子は鼻息を荒くして興奮している。

息子が倒れてるのに、何とも思わないのだろうかこの人は、


加害者であるさくらはドヤ顔でアゴを突き出す。

そして鏡子に体を向け叫ぶのだ。



(さくら)「ご唱和下さい!!」



(鏡子)「ハーイ!!」



(さくら)「行くぞー!!」



(さくら)「イチ!!」


(さくら)「ニイ!!」


(さくら)「サン!!」



(さくら)「ダー!!!!!」

(鏡子)「ダー!!!!!」



(鏡子)「サイコー!! さくらちゃーん!!」



(さくら)「エヘヘ…」












(勇次)「……うう…俺の安否はなしかよ…」



勇次は目から涙が出る思いだった。

そして心の中で心底思った。







……あぁ…最悪だ…







(鏡子)「さぁ!! イヲンに行くわよ!!」



(さくら)「オー!!」



(鏡子)「ほら、勇ちゃんも立って」



(さくら)「いつまで寝てんのよアンタ」



(勇次)「……」



渡る世間はバカばかりである。