さくら木一本道


さくらは首を傾げ、腕を組み、しばらく頭の中で考える。

何か思いついたのか、ゲーム画面から目を離し、勇次に顔を向けた。



(勇次)「?」



そして、真剣な顔で―



(さくら)「あんたオカマ?」

(勇次)「んな訳ねぇだろ!!!」



さくらの馬鹿らしい発言に、勇次はすかさずツッコミを入れてしまった。



(勇次)「あ~… もういい分かった、てゆーか疲れた… もうコンビニいってくるわ、肉まんだったな?」



(さくら)「えぇ」



実際なにも分かってはいないが最早どうでもいい、それよりも、また雨が降りだす前に早く禊を終わらせたかった。



(勇次)「他はないな?」



(さくら)「無いわ、願いが叶うなら雨を勇次に~」



(勇次)「お前な…」










場所は移り、勇次は歩いて約15分の所にあるコンビニに着いた。



(?)「いらっしゃいませ~…って、勇次君じゃない、どうしたの?さっき来たばっかでしょ?」



店内に入ると、ショートカットの40代位の女性店員が、見知った人のように勇次に話しかけた。

勇次も知り合いのように返事をかえす。



(勇次)「オッス… おばちゃん」



この女性は田村家の近所に住んでる「高森 涼子(たかもり りょうこ)」、鏡子の女友達である、なので勇次を小さい頃から知っているのだ。

そして、このコンビニの店長でもある。



(涼子)「ありゃりゃ… 随分疲れてるわね」



(勇次)「そりゃコンビニに二回も来ればね…」



(涼子)「今度は何を買いに来たの?」



勇次はレジに置いてある肉まんの入ったケースを指差し、



(勇次)「肉まんを…」



(涼子)「肉まんだけ!?」



(勇次)「ハイ…」



(涼子)「あははは!! 何!?そんなにお腹空いたの?」



(勇次)「いや、俺じゃなくて、凶暴なゴリラが…」



(涼子)「ゴリラ?」



(勇次)「い、イヤイヤ、なんでもないっス!!」

(今さくらの事を言うのはやめておこう…)



こんなところで変な説明をするより、どうせ鏡子と会う機会が多いのだから、その時にゆっくりと説明してもらえばいい、

「平行別世界から来た娘を居候させてる」など信じはしないだろうが、そこら辺をどうするかは鏡子に任せるとした。

そんなことより勇次は、肉まんを食いたいがために2度もコンビニを訪れた、この恥ずかしい状況をどうにかしたかった。



(涼子)「食べ盛りだから仕方ないけど、あまり食べ過ぎもよくないよ?」



(勇次)「はぁ… 気を付けます…」



(涼子)「うん!! 学生は健康が一番!! あ、いらっしゃいませ~」



(勇次)「クソッ… なんでこんなこっぱずかしい事しなきゃいけねぇんだよ… それもこれも全てあのゴリラのせい…」



(涼子)「勇次君?」