さくら木一本道


(勇次)「うるせーなー… 俺はコイツ(ゴリゲッチュ!!)で10年間遊んでんだぞ?」



(さくら)「じゅ…10年!!? 10年もやっててコンプリート出来てないの!!? うわダッサー!!」



さすがにイラッと来た勇次は電源に手を伸ばした。

二度と貸してやるものか、



(勇次)「よし電源切ろう」



(さくら)「させるか!!」



‐ガツッ!!!‐


(勇次)「ふごぉ!!?」



さくらは「プレシテ」の電源を消そうとした勇次の足に、見事な低空キックを決めた。

無理やり両足を床からつき離された勇次は、受け身もとれず、キックの威力で顔面から床に叩きつけられる結果となった。



(さくら)「私に制裁を下そうなんて10年早いのよ」



(勇次)「……なに? ……なんだ…?俺がお前に制裁を下すには、「ゴリゲッチュ!!」をやってた期間をもう一回過ごさなきゃいけないのか…?」



勇次は顔面を床に付けたまま喋る。



(さくら)「そのまま起きないで、画面が見えなくなって邪魔だから」



(勇次)「…ふざけんな!! さっきから自分勝手言いやがって!!」



勇次は立ち上がろうとする。



(さくら)「だから起きるんじゃないって」



「が!!?」



だが、背中にさくらの「かかと落とし」が降りかかる、そしてまた元の体制に戻された。

「低空キック」から「かかと落とし」までの行程を、さくらは座ったまま遂行したのだ。

スポーツをしていない勇次とは言え、同学年の男子をここまで弄ぶとは、やはり、さくらの怪力は常人の比ではない、



(勇次)「クソッ…とんだ女だお前は… 他のヤツには猫被って、なのに俺には悪魔の顔見せやがって」



(さくら)「うるさいわね、いいでしょ別に」



(勇次)「イヤ… 俺がよくねぇ…」



(さくら)「しょうがないじゃない、今までそうやって生きて来たんだから…」



(勇次)「?」



(さくら)「アンタだって人には見せたくない「裏の自分」があるでしょ?」



(勇次)「……まぁ… 確かに…」



(さくら)「だから、アンタも私と同じよ」



(勇次)「……そういうもんスか…」



「どうでもいいけど、いい加減この足をどけてはくれないっスか?」

と、勇次は思っていた。

だが、足をどける気配もなく、さくらの話はまだ続く、



(さくら)「そうよ、それに私もね… 小さい時にお父さん亡くしてるんだ」



(勇次)「……」



(さくら)「アンタみたいにほとんど記憶が無い訳じゃないわ、まぁ、帰りが遅かったから顔も覚えてないけど…」



(さくら)「なんじゃそりゃ? それじゃあ俺と一緒じゃねぇか」