さくら木一本道


(さくら)「ねぇ勇次」



キレてリビングに消えたはずのさくらが、真横からいきなり現れた。



(勇次)「うわ!!? 今度は何だよ、いきなり現れて!!」



(さくら)「すっごく暇なんだけど!!」



怒って消えたり、暇だと現れたり、全くもって忙しい奴である。



(勇次)「そんな唐突に暇だって言われてもなー… あっ、そうだ「プレイシテーション」ならあるぞ?」



(さくら)「え!? ここの世界にも「プレシテ」あるの!?」



「プレイシテーション」とは、某電機メーカーから発売された有名なゲーム機である。

とあるゲーム機名と同じような名前なのは、悪しからずご了承願いたい、



(勇次)「あるぞ…ってか、お前の世界にもあるのか!?」



(さくら)「ねぇ!!やらしてやらして!!」



(勇次)「分かった分かった、ちょっと待ってろ?」



勇次は二階の自分の部屋に行き、押し入れの中にある黄色い籠から「プレシテ」を持ってきた。

勇次が持って来た「プレシテ」は、灰色をした平形のゲーム機、まさかとは思うがこれは―





(さくら)「……プレイシテーションって… 「初代プレシテ」のことだったのね…」



今や「プレシテ4」まで出ているというのに、いまだ「プレシテ1」で遊ぶ高校生など、勇次くらいなものだろう。



(勇次)「文句あるか? 田村家最新鋭のゲーム機だぞ」



(さくら)「せめて「プレシテ2」ぐらいにしなさいよ…」



(勇次)「そんな金はねぇ、いいからやってみろって、意外と面白いから」



(さくら)「……ソフトは?」



(勇次)「「ゴリゲッチュ!!」しかない」



(さくら)「懐かし!! 古すぎでしょ!!? いや… プレシテの時点でもう古いか…」



(勇次)「何だよ用意させといて、やるのか?やらないのか?」



(さくら)「うるさいやるわよ!! ゲームセットして!!」



(勇次)「ハイハイ…」



勇次はソフトをセットし、電源を入れた。



‐ブウーーンー… ピッ…‐



(さくら)「……」



‐チャンチャチャン… ゴリゲッチュ!!‐



さくらはセレクト画面から「セーブデータ」を選択した。



(さくら)「……ねぇ… これアンタのセーブデータよね?」



(勇次)「おう」



(さくら)「全然コンプリートしてないじゃない」



(勇次)「いいんだよ、俺はストーリーを楽しむ人間だからな、街中にゴリラが残ってようがしるか」



(さくら)「ストーリー求めてるなら「ゴリゲッチュ!!」はどうかと思うわよ…」