そうだ…

コイツは一人で自分の問題を解決しようとしているんだ。

帰れる方法も分からないのに、一人で…

だったら俺が出来ることは…



(勇次)「……さくら」



勇次はとある決意と共にさくらの名を呼んだ。



(さくら)「なに?」



(勇次)「夕方、お前を連れて来いきたい所がある」



(さくら)「?」



(勇次)「来てくれるか?」



(さくら)「……いいけど… その前に肉まん」



(勇次)「え?」



今、それを思い出すかさくらよ、



(さくら)「当たり前でしょ? 雨の楽しみのもう一つは、アンタがずぶ濡れでコンビニに行くのを見るのが楽しみなんだから。 ほらさっさと行く!!」



(勇次)「ま、待て、その前に昼にしようぜ?な?」



(さくら)「……まぁいいわ」




時間は昼の12時を回り、いつまでも帰って来ない誠雪を疑問に思った勇次は、誠雪に電話をかけた。




‐プルルルルルルル…ガチャ‐

(誠雪)「ハイ、なんだ勇次?」



(勇次)「兄貴なにしてんだ?遅いじゃん」



(誠雪)「いやさ~ 仕事場で色々調べてたら時間忘れちゃって…」



(勇次)「はぁ!? この後田んぼに行くんだろ!? 兄貴が居なきゃ「トラクター」動かせねぇじゃん」



(誠雪)「いや、雨降ってんじゃ今日は無理だろ」



(勇次)「……ならよ、無理なら無理と電話してくれ…」



(誠雪)「ハハハ… 悪かった、悪かった、とりあえず今日の作業は無しってことで」



(勇次)「ハイハイ…」



(誠雪)「じゃあ、もう少し調べ物したら帰るから、ヨロシク!!」



‐ガチャ!!…プープー…‐



(勇次)「ハァ…」



誠雪にしては珍しい事をする。

確かに、爽やかなドS野郎の誠雪ではあるが、こういう報告は怠らない人間なのだ。

まあ彼も一社会人だ、職場から連絡があったということは、何かと事情を抱えているのだろう。



(さくら)「誠雪さんなんだって?」



(勇次)「今日の作業はとりあえず中止だってよ、兄貴はもう少し調べ物してから帰るとさ」



(さくら)「ふ~ん…」



(勇次)「しょうがねぇ… 昼飯でも作るか…」



(さくら)「あ~あ… 何が楽しくてアンタと今日一日を二人っきりで過ごさなきゃいけないのよ」



嫌々、首を横に振るさくらだか、それは勇次とて同じことである。



(勇次)「その言葉そっくり返してやるよ」



‐ドカッ!!!‐

(勇次)「おふ!!」



余計なこと言わなきゃいいのに、勇次はつい本音が口走ってしまった。

もちろん、鉄拳制裁という名の脇腹ジャブが勇次を直撃する。




(さくら)「……私、これでも小さいころは空手やってたんだから、今度は「ミゾオチ」に叩き込むわよ…」



(勇次)「わ、脇腹が…」



(さくら)「ほら、早く飯作る」



(勇次)「くそっ…」