(さくら)「……アンタ、ちゃんと買って来たでしょうね?」
そんな勇次に冷たい目を見せるさくら、
(勇次)「ちゃんと買って来たよ… ほれ、コンビニのジュース」
そもそも、何故勇次はコンビニでジュースを買って来たのか、それには理由がある。
胸の一件の怒りが収まらないさくらは、勇次に「ジュースを奢れ‼」と言ってきたのだ。
いわゆる禊と言うやつである。
ただ、とんでもない条件があった。
「自販機ではなくコンビニのジュースを買って来ること」
「傘は指さずに行くこと」
以上である。
「まあ、走っていけとまでは言わないわ」
などと、優しい言葉風に言っていたが、よく考えれば、ゆっくり行けばその分だけ雨にあたる時間が増えるのである。
優しさもへったくれもない、
(さくら)「じゃあ次、肉まん」
(勇次)「ま、またコンビニか!? さっき行ったばっか…」
(さくら)「ジュース買って来た位で許すわけないでしょ?ほら行った!!」
(勇次)「か、勘弁してくれ…」
(さくら)「いやだ!!! 何年これ(胸)に悩まされてると思ってるのよ!!」
(勇次)「……そんな気にする事ないだろう胸くらい…」
(さくら)「あ!!?」
手を顔の横に上げ、バキバキと音をたてながら拳を作るさくら、あまりにも力を入れているためか、拳には血管が浮き出ている。
(勇次)「……」
(さくら)「アンタねぇ… これ以上デリカシーの無いこと言ったら、股間に思いっきり蹴り喰らわすわよ…」
(勇次)「……す、すいません…」
(さくら)「とにかく、アンタは早く肉まんを…」
さくらは喋りを途中で止め、外を観る。
(勇次)「……どうした?」
(さくら)「雨… 弱まっちゃったんだ…」
勇次は外を見るのではなく、家にあたる雨の音を聞いた。
(勇次)「あぁ… さっきまでかなり降ってたのにな。 雨好きなのか?」
(さくら)「……アンタはもう知ってるだろうけど… 私は力の加減が強弱しかないのよ」
(勇次)「卵と薪割りの件でよく分かった。」
(さくら)「そのせいかね、天気も「晴れるならカンカンに」「雨ならザァザァと」降ってくれるのが好きなの」
(勇次)「それは良く分かる。確かに晴れなら雲一つ無い快晴になってほしいよな」
(さくら)「でしょ? それと雨はね、なんと言うか… 音が好きなんだ、全ての騒音を消してくれて、雨の音だけが残って… 一人の空間に入れて… 嫌な事も頭の混乱もかき消してくれると言うか…」
(勇次)「……」
笑みを浮かべながらに外を眺めるさくらを見て、勇次はまた胸が締めつけられた。
