彼女の名前は「ミチコ」

さくらとは一年からの友達であり親友である。

また、朝は必ずさくらの背中を叩くのが習慣らしく、バスケ部で鍛えた腕力から出されるビンタは強烈で、それはさくらを本気で怒らせたこともある、

だがやめない、

なぜかやめない、

ヘラヘラとするばかりである。


と言うわけで今日もビンタを食らったさくらは、あまりの痛さに背筋をピーンと伸ばしていた。



(さくら)「ミッチー… 痛い、 背中が…ヒ、ヒリヒリと…」



(ミチコ)「あはは~(笑) さくらが悪いんだよ?さくらの背中がちょうど、ジャストミートゾーンだったからさぁ~」



(さくら)「……えっ何? 私が悪いの? 私の背中が悪いの? 私の身長が低いと言いたいの?」







(ミチコ)「……ん~…全部?」

(さくら)「チェストォおぉぉぉぉ!!!!」



さくらはミチコの頭部に強烈な空手チョップを決めた。



(ミチコ)「痛!! いった~… 何すんの~…」



(さくら)「これでおあいこでしょ? それよりミッチー こんな時間に登校してくるなんて珍しいね。部活はどうしたの?」



(ミチコ)「ん? んああ~… 部活はねぇ、今日は朝だけ休みなんだ~」



(さくら)「へー… 平日でもバスケ部って休みあるんだ。でも朝だけ休みじゃなぁ…」



さくらはあからさまに寂しそうな顔をする。

何故ならば、さくらと「対等に友達」と呼べる人間はミチコしかいないのだ。

ミチコにフラれれば、さくらの放課後や休日は一人で過ごすことになる。



(ミチコ)「そんな寂しそうな顔しないで~ 明後日の日曜は完全オフだからさ、どっか遊び行こうよ!!」



(さくら)「うん!!」



(ミチコ)「さぁ!! 学校に向かいますか!! 今日は午前中はずっと体育だから楽だぞー!!」



叫びながらいきなり走り出すミチコ、



(さくら)「ちょっ 待ってよミッチィー!!」



追いかけるようにさくらも走り出すのだった。





‐キーンコーンカーンコーンー……‐





時間は流れ、午前の授業を終えるチャイムが鳴り響き、昼休みの時間となった。


ちなみに、午前中が丸々体育だった理由は、

近々「全科合同新入生歓迎会」と言う名の地獄のウォークラリーがあり、コースの確認とチェックポイントの周知を兼ねた、事前のコース回りをしていたからだ。

そのおかげで、朝から何も食べていない腹はいい感じに減り、さくらはすぐさま机の上に弁当を置いた。

実は、さくらの中で密かな楽しみになっている「弁当の中身」 朝ご飯のメニューがそのまま弁当の中身となっているのだ。

さくらは期待をふくらませて弁当の蓋を開けた。



(さくら)「……」



まさに絶句だった。



(さくら)「……ネギと…味噌?…」



つまりネギ味噌である。

弁当の中へ大雑把に詰められたご飯の上に、ネギ味噌がこれまた大雑把に乗っている、

母親の手抜きによって作られた弁当の姿は、さながらドカベンと言うのにふさわしい。



(さくら)「……」