(さくら)「ほら勇次、キレイに切れたじゃない」



(勇次)「……あーあ… やっちまった…」



(さくら)「何がよ?」



(勇次)「お前、それ(斧)抜いてみろ…」



(さくら)「何いってんのよ、それぐらい… あ、あれ?」



薪割りは、木を切った勢いで斧の刃を傷付けないために、木を置く土台に木材を使うのだが、全力で振り落とすと斧が土台に突き刺さってしまう、

突き刺すのは簡単だが、逆に抜き取るとなるとけっこうな力が必要になる。



(勇次)「だから待てっていったのに…」



(さくら)「う、うるさい!!抜けばいいんでしょ!!抜けば!!」



さくらは土台に両足を乗せ、全体重で斧を引っ張る。



(さくら)「んぎいぃぃぃぃ!!」



こいつはテコの原理と言うものを知らないのか、顔を真赤にして頑張ってやがる、となると結果はどうなるか勇次には分かっていた。



(勇次)「……」

(まさかな…)



(さくら)「んぬおぉぉぉぉぉ!!」






‐スポーーン!!‐



(さくら)「ふぎぃ!!」



(勇次)「……やっぱり」



突然斧が抜けたため、斧は勢いよく空に、さくらは勢いよく地面に落ちた。

女が斧を飛ばしたところで大したことないだろうと勇次は思っていたが、

しかし、さくらの怪力は常人の比ではなかった。

尋常じゃない高さまで斧をぶっ飛ばしていたのだ。

そして、その高く上がった斧は地球の引力に引き寄せられ、物凄い勢いでさくらに落下して来たのである。



(勇次)「マジか!!!?」



さくらを助けるため勇次はとっさに飛びかかり、さくらを両腕で抱いたまま家の壁に頭をぶつけた。



(勇次)「がっ!!」



‐ヒュンヒュンヒュン…‐



(勇次)「い、いってぇ~……!!」



‐ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!‐



(勇次)「なあ!?」



さくらは落下地点から移動したので大丈夫だが、代わりに勇次の足が落下地点に取り残されている。

そのまま勇次の―



‐ヒュン!!ヒュン!!ザンッ!!!‐


足のすぐ横に突き刺さった。