(さくら)「昨日とキャラ違くない?」
さくらが感じていた違和感、
挙動不振というか、
どことなく元気がないというか、
昨日今日初めて会ったとはいえ、あからさまに自分に対する接し方が違う事をさくらは感じ取ったのだ。
(勇次)「そ、そんなことねぇよ…」
察してほしくないところを突かれ、勇次も否定はするが、さくらと目を合わせようとしない、
感付かれてしまうのはこういうところなのだが、
(さくら)「イヤ、絶対ちがう、アンタ見た目的に無口キャラじゃないもん」
(勇次)「う…うるせえな 俺だって無口になりたい時もあるわ」
(さくら)「なにキレてんの?」
(勇次)「あ…イヤ… そうゆうわけじゃ…」
失言した。
これ以上深く掘り下げてほしくないばかりに、勇次は冷たい態度をとってしまった。
(さくら)「もういいわ!! アンタ分けわかんない!!」
(勇次)「ぐっ…」
おかげでさくらも苛立ち、不機嫌になって言葉を吐き捨てる。
そしてまた沈黙が続く。
「……」
「……」
(勇次)「……あの…さ…」
ついに耐えきれなくなったのか、それとも観念したのか、勇次が口を開いた。
(勇次)「いやさ… 昨日の夜の事なんだけどさ…」
(さくら)「夜って…卵の件? まぁ、あれは私も悪かったと思って…」
(勇次)「ちげぇ!!」
まさかさくらの思い出す記憶が、卵を叩き潰す記憶だとは思わなかった。
せっかく勇次が話す気になったのに、卵を叩き潰すさくらの勇ましい姿が勇次の脳裏を埋め尽くす。
思い悩んでいたことなど、どうでもよくなるところだが、勇次は気を取り直し、思い出して欲しい本当の場面を伝える。
(勇次)「えーと… その… ばーちゃんがお前の布団を敷いてる時だ…」
(さくら)「敷いてる時…って!! ア、アンタ聞いてたの!?」
まさか勇次が、あの夜のお婆ちゃんとの会話を聞いていたとは思わなかった。
素直な自分を見られるのは、さくらにとってとても恥ずかしいことなのである。
(勇次)「や、わざとじゃないんだ。 偶然聞こえたとゆうか…」
(さくら)「……で… そ、それが何よ?」
(勇次)「……悪かったよ…」
(さくら)「え…?」
(勇次)「お前の気持ち知らないでさ… その…」
勇次は言葉が見つからず、声をつまらせる。
そんな勇次とは裏腹に、その様子を見てさくらは驚いていた。
何か気不味い雰囲気を勇次から感じ取ってはいたが、まさかそんなことを気にしていたとは、そして、さらに驚きなのは、その事に対して謝って来たことだ。
勇次が謝る理由がない、確かにお婆ちゃんと話した言葉は素直な自分の気持ちで、その言葉通り不安な気持ちもある。
そんな気持ちを知らなかった事に、勇次は負い目を感じているようだが、そんなことはない、この世界に来てしまったことも、この不安も、全ては自分が勝手に背負ってしまった事なのだ。
勇次が負い目を感じることはない、
さくらはその事を伝えるために笑みを浮かべながら答えた。
しかし、素直な自分は恥ずかしいので遠回しに、このお人好しに感付かれないように目を合わさず答えるのだった。
(さくら)「なーに辛気臭いこと言ってんのよ」
(勇次)「……」
(さくら)「私は大丈夫だし、あの後お婆ちゃんにいっぱい話聞いてもらったし…」
(勇次)「……」
(さくら)「アンタん家に迷惑かけないように、早く「帰る方法」も探すしさ」
(勇次)「いや、俺が言いたいのは…」
‐…ブウゥゥゥン‐
(さくら)「あ、ほら!! 誠雪さん帰ってきた」
(勇次)「お、おい!!」
家の前から伸びる、真っ直ぐな道の奥のT字路から、誠雪が乗る軽トラが見えた。
(勇次)「くっ…タイミングの悪りぃ!!」
