(さくら)「……えーと… あんたの事なんて呼べば…」
(勇次)「……勝手にしてくれ…」
「……」
「……」
(さくら)「……あのさ…」
(勇次)「?」
(さくら)「その… ……悪かったわ… あんたに助けられたのにあんな怒鳴って…」
(勇次)「……いや、しょうがねぇよあんな状況じゃ、むしろ小さい事にキレてた俺が悪い…」
「……」
(さくら)「……そのさ……ありがとね……勇次」
(勇次)「いきなり呼び捨てかよ…」
(さくら)「ちょっ、アンタが「勝手にしろ」って言ったんでしょ!!…ってか、いつになったら着くのよあんたん家!!」
(勇次)「しょうがねぇだろ、3キロぐらい離れてんだから」
(さくら)「遠!! バスで行きなさいよ!!」
(勇次)「バスがもうねぇから歩いてんだろうが‼ なんだ?文句あんのか? だったら家までダッシュで行ってやらぁ!!」
(さくら)「ちょっ… こら!!」
猛ダッシュしたおかげで、早く勇次の家に着いた二人だった。
(さくら)「ハァー…ハァー… あ、アンタのせいで… 無駄に疲れたじゃないの!!!」
‐ドカッ!!!‐
(勇次)「が!!?」
さくらは勇次に見事な回し蹴りを決めた。
(勇次)「っ!!~…お前なぁ… 手ぇ上げるのはやめろよ…」
(さくら)「手は上げてないわ、上げたのは足よ!!」
(勇次)「ガキかお前は」
(さくら)「それより、アンタん家ってここ?」
(勇次)「…あぁ、そうだが」
そう言うと、さくらは勇次の家とは反対方向へ顔を向けていた。
(勇次)「…どうした?」
(さくら)「ちょっと待っててもらっていい? すぐに戻って来るから」
(勇次)「別に構わんが…っておい‼」
さくらは勇次に振り返ることもなく、そそくさと暗闇へ走り去って行った。
(勇次)「何なんだアイツ…」
それから勇次はしばらく玄関先で待たされることになった。
さくらはすぐに帰ってくると言ったにもかかわらず、30分たっても帰って来なかったのだ。
あまりに遅いので探しに行こうと立ち上がったその時だった。
暗闇からザッザッと人が歩いて来る音が聞こえてくる。
(さくら)「……」
暗闇から現れたのはさくらだった。
だが、その時のさくらはどこか不機嫌な顔で、
「どこに行ってたんだ?」という勇次の質問にも
「…別に」と、これまた不機嫌な返事が返ってくるだけだった。
「どこに行こうが構わんが、待たせてごめんなさいの一言もないのか貴様は…」
と勇次は思っていたが、ここで駄々をこねても仕方ないので家の中へ入ることにした。
(勇次)「ウチは純和風の家だ、ちょいとボロっちぃぞ?」
(さくら)「うん、キライじゃないなぁ~ この雰囲気…」
(勇次)「そうか、そりゃーよか…」
笑みを浮かべなから家の中を見渡すさくらを見て、勇児は胸が締めつけられるような…
何故かそんな気がした。
(勇次)「……?」
