しばらくしてミルクを哺乳瓶に入れて来た茜は、それを牧場長に渡した。
受け取った牧場長は頬でミルクの温かさ確認し、なんとそれをさくらに渡したのだ。
(さくら)「……へ?」
受け取ったさくらは、意味がわからずキョトンとしていると、牧場長が口を開いた。
(牧場長)「オメェ、あの子ヤギに触れたんだよな?」
(さくら)「…まぁ、そうだけど」
(牧場長)「じゃあ子ヤギにミルクやってみろ」
言われたさくらは、子ヤギに近づきミルクを前へと持って行く、
すると、子ヤギはためらいもなく哺乳瓶にしゃぶりついてミルクを飲み干していくのだ。
(牧場長)「決まりだな」
その様子を見て牧場長はニヤリと笑い、さくらに業務命令を出した。
(牧場長)「青井、今日からその子ヤギはお前が担当しろ」
(さくら)「はあ?」
(牧場長)「育成にあたっての指示は茜が出す、オメェはその指示の通りやれば良い、今日からお前が子ヤギを育てるんだ」
そう言って牧場長は、茜の肩にポンッと手を乗せていて、その茜は突然の指示に驚きを隠せないでいた。
何故ならば、茜が指示を出すとは言え、農業に関わったことのない素人のさくらに、子ヤギを任せるなど正気の沙汰ではないからだ。
(茜)「牧場長大丈夫なんですか!? さくらちゃんはまだバイト始めて一週間もたってないんですよ‼?」
(牧場長)「そのためのお前だろ? それにあの子ヤギは青井にしかなつかねぇんだしよ」
(茜)「いや…でも」
牧場長はお構い無しに話を進めていく、
(牧場長)「それにしても青井、お前よく子ヤギに触れたな、どうやったんだ?」
(さくら)「どうって、昔飼っていた犬に……?」
(牧場長)「犬?」
さくらは言葉を止め、少し考え込むような素振りを見せるが、すぐに首を横に振り、牧場長を見た。
(さくら)「…なんでもない、ま、私の慈愛の心が子ヤギの心を開かせたのよ」
(牧場長)「あ、あっそう…まあいいや、青井、ミルクやり終わったら帰っていいから、茜、後は頼むな」
(茜)「ちょっ…牧場長‼」
