(さくら)「悶えるほどかわいい~‼」
(茜)「ちなみに今私がミルクを与えてる子牛が春子の子供よ」
(さくら)「なに‼? こんなかわいい子があのクソ牛の子供なの‼?」
(茜)「うん、かわいいでしょ? この子が一番ミルク飲むから一番元気がいいのよ」
茜は飲み干した哺乳ビンを子牛から離すのだが、子牛はまだ飲み足りないらしく、茜によじ登るようにして哺乳ビンに向かって首を伸ばしていた。
その様子を見て茜は「はぁー…」とため息をつき、部屋の隅に目を向ける。
(茜)「でも子牛達が元気よすぎて、あの子ヤギがあんまりミルクを飲んでくれないの…」
茜が目を向ける先には、部屋の隅で小さい体をさらに小さく丸めている子ヤギがいた。
その子ヤギは、さくら達をチラッと見ては目を逸らし、また見ては目を逸らしを繰り返していた。
(さくら)「何あれ?」
(茜)「あの子は性格も臆病だから人間にもなつかないのよ、このまま行けば衰弱していつかは…」
茜は言葉を詰まらせて子ヤギを見つめていた。
自分が手にとって生まれた子ヤギが衰弱していく様に、茜も思うところがあるのだろう。
本当は母親のヤギに面倒を見させれば良いのだが、そのヤギは子ヤギを産んだ数日に病気で死んでしまったのだ。
もはや育てる者は人間しかおらず、あの子ヤギが人に慣れなければ生きて行く術はないのだ。
(さくら)「……ふーん…」
さくらも子ヤギをじっと見つめて、そしてなにを思ったのか茜から離れ、ゆっくりそしてゆっくりと低い姿勢で子ヤギに近付いて行く、
(茜)「……さ…さくらちゃん?」
(秋花)「お姉ちゃん…」
