(さくら)「ぬぅぅ… 妙な視線を感じてはいたけど…アンタもしつこいわね‼ 勇次かお前は‼」
(秋花)「勇次兄ちゃん?」
急に出てきた勇次の名に首を傾げる秋花、なぜ「勇次=しつこい」なのか理由が分からなかったからだ。
(さくら)「そうよ、今日も朝からネチネチと人の事ばっか気にしやがって‼ こうるさくて腹が立つ‼」
(秋花)「それは「優しさ」って言う事じゃなくて?」
(さくら)「むっ…うーん… まあそう言われればそうだけど… だけど私は‼ 野郎に心配されるほど弱くないし‼」
(秋花)「それでも勇次兄ちゃんはさくらお姉ちゃんのことが心配でたまらないんだよ、私はそんな勇次兄ちゃんの優しいところが大好きだよ?」
(さくら)「え? 大好き? 勇次のことが?」
(秋花)「うん‼」
ニコリと笑う秋花を見て、さくらはワナワナとある感情が込み上げてきて、それを吐き出さずにはいられなかった。
(さくら)「私の秋花をたぶらかせやがってあのロリコン野郎‼」
(茜)「さくらちゃん… 秋花ちゃんの好きはそれとは違うんじゃないかな…」
(秋花)「ねぇロリコンってなに?」
勇次の知らないところで見に覚えのないレッテルを貼られ、社会的立場が落とされていた。
そんなこんなで新しい干し草を撒き終えた三人は、また場所を移動し、牛舎の隣にある飼育室へと移る。
先ほど牧場長に頼まれた、子ヤギと子牛にミルクを飲ませるためだ。
(さくら)「ふわぁははぁ~…」
さくらはそこで目をまん丸とさせて、気の抜けた声をあげていた。
なぜなら目の前に足取りもおぼつかないような子牛が、茜の持っているミルクに必死にしゃぶりついていたからだ。
