さくら木一本道



(茜)「それはね… うちの牧場は北総の授業場所になってるからなの」



(さくら)「え? どゆこと?」



(茜)「私たちが育ててるこの動物は、単純に出荷するだけじゃなくて勉強の教材なのよ」



そう、さんちファームは育成出荷がメインではなく、勉強の教材を育てることがメインなのだ、

そのため動物の種類が多く、個々の数が少ない今の状況が出来上がったのだ。



(茜)「だから私も牧場長も、事実的には北総の準教員ってことになってるの」



(さくら)「へぇー、じゃああかねぇは先生ってことなんだ」



(牧場長)「そんな良いもんじゃねぇよ」



タバコをくわえた牧場長が柵の外から話に入り込んできた。



(牧場長)「先生ってのは良い大学出て普通科目教えてる奴らのことで、俺らなんざバイトみてぇなもんだ、この牧場も奴らから見れば体の良い下請けだよ」



不機嫌な顔をしながら先生たちの話をする牧場長を見て、さくらは茜にこそこそと耳打ちをした。



(さくら)「……オッサン… なんかイラついてる?」



(茜)「牧場長は先生たちのこと毛嫌いしてるから…」



(牧場長)「昔っからセンコーっつのは気に食わなかったが… 今はさらに殺意しか湧いてこねぇ」



牧場長の極悪顔でそれを言われると、冗談には聞こえないのだが…



(牧場長)「まぁそれはそれとして… 茜、後で子ヤギと子牛にも乳くれといてくれ」



(茜)「はいわかりました」



(牧場長)「あと青井」



(さくら)「?」



首を傾げるさくらの後ろを指差しながら牧場長は言った。



(牧場長)「お前… 春子になんか狙われてんぞ?」



(さくら)「なぬっ‼?」



目の前の餌に目もくれず、さくらの後で目を光らせる牛の春子がそこには居た。