(さくら)「はぁ~… 痛かった」



そう言って、殴った右手をプラプラと振るさくらの足元で、今度は勇次が顔を手で覆いながら悶絶していた。



(さくら)「…あら?ここはどこかしら?」



キョロキョロと辺りを見渡すさくらの後で、顔面に真赤な拳のアザをつけた勇次が立ち上がった。



(勇次)「ふざけんなよお前‼ 今のは痛かったぞ‼」



(さくら)「はぁ? 私の方が10倍増で痛かったし‼ ワンパンで済ましてやってんだからアンタの方がお得でしょうが‼」



(勇次)「どこがだよ‼」



「お前はいっぺん己の怪力を知れ‼」勇次がそう思っていると、

さくらは風を振り払うような仕草で、キョトンと呆然となるようなことを言い出した。



(さくら)「そんなことよりもここはどこよ‼」



(勇次)「……はぁ? 体育館裏の部室棟だろうが、お前も北総なら知ってんだ…ろ…―



言葉を返す途中で、勇次はさんちファームでの一件を思い出した。



(勇次)-お前北総だったんだろ!? だったらここが北総の授業場所だってわかんだろ‼-



(さくら)-知らないわよ‼ そんな別校舎で授業受けてる「農業科」の奴らのことなんか‼-



そう、そんな会話をしていたのだ。

そのときも言ったが、北総には「農業科」「工業科」など存在しないのだ。

ましてやそれを専門とする別校舎などありはしない、



(勇次)「…おいさくら、もしかして…」



(さくら)「そうよ分からないの‼ どこに校舎や体育館があるか全く‼ この学校、私の知ってる北総とは違う‼」



(勇次)「……」



ほんの少しだけ無言が続いた二人の間に、砂混じりの強い風が吹き抜けた。

しかし、そんな風を微動だにせず、さくらはまっすぐに勇次を見つめていた。



(さくら)「ついに見つけた… アンタの世界と私の世界の相違点を、手がかりとなりうるヒントを‼」