さくら木一本道


5分位で話は終わり、さくらは反応を見たくなくて少しうつ向いていた。

すると、しばらく沈黙が続き、その沈黙を断ち切るように孫の勇次が口を開くのだった。



(勇次)「…それ、マジ…?」



まあ、当然の反応だろう、



(さくら)「冗談でこんな話ししないわよ…」



しかし、お婆ちゃんは勇次とは違ったようで、顎に手をあてて、何か考え込むように口を開くのだった。



(お婆ちゃん)「う~ん… 知っているかどうか分からないけど試してみるかねぇ… さくらちゃん?」



(さくら)「はい…」



(お婆ちゃん)「この神社はねぇ 稲荷神社だから商売繁盛の神様なんだけどの他にも「縁結び」としても有名なの。 何で縁結びなのかっていうとね……」



お婆ちゃんはおもむろに昔話を始めた。



大昔、この場所には二人の神様がいた、一人は女の神様、もう一人は男の神様、

二人はそれぞれ違う土地の神様だったが彼らは出会い、恋仲になった。

しかし、彼らは別々の神様、決して交わってはいけない。交わってしまったら、力と力がぶつかり災いをもたらしてしまうから、

災いをもたらさないため、「天の神」(あまのかみ)は二人を突き放すことにした。

そして二人を遠くへと引き離した。

二度と会えぬように、しかし、会えなくなっても、二人はお互いを強く想い続けた。

数百年後、その想いは力を生み、一本の桜を咲かせた…






(お婆ちゃん)「……その桜がこの華顔神社に咲いている一本桜、だから縁結びの木として人々は崇めた… と言うお話しなんだけどね?」



(さくら)「そんな物語があったんですか…」



(勇次)「俺は何十回と、ばーちゃんに聞かされてるけどな…」



(お婆ちゃん)「さて、ここからが本題。 本堂の横にある狐の石像、私達の神社は「左側が雌」「右側が雄」なんだけど… さくらちゃんの方の神社はどうか分かるかな?」



さくらは、自分の世界の石像を思い出してみた。

たしか、


「左側に子持ちの狐」

「右側は物をくわえた狐」


あの売店のお婆さんは「子持ちが雌」と言っていた。

つまり、


「左側が雌」

「右側が雄」


今いる神社の石像と同じだ。




(さくら)「…同じです」



(お婆ちゃん)「じゃあ「子持ちの狐」はどっち?」



(さくら)「左側の…雌の狐です」



(勇次)「!!…」



(お婆ちゃん)「……やっぱりね…」