さくら木一本道


(青年)「……」

(なんかただ事じゃないな…)


(青年)「と、とりあえずさ、上の売店に来ねぇか? 俺のばーちゃんが働いてるし、少し休めるぞ?」





(さくら)「……」





(青年)「おい…?」



訳の分からない事が多すぎて、さくらは放心状態だった。



(青年)「……しょうがねぇ、 このままほっておけねぇしな…」



仕方なく青年はさくらを背負い、上の本堂の売店に連れて行った。











気を失ってから何分経っただろうか、



(さくら)「……ん…」



(?)「おや? 目を覚ましたみたいだね」



目を覚ましたさくらは、聞き覚えのないお婆さんの声を聞き、上体を起こして周りを見渡すと、

そこは5畳ぐらいの和室の部屋で、さくらには布団がかけられていた。

隣の枕元には、白髪の痩せたお婆さんが正座をして座っている。



(さくら)「ここは…?」



(お婆ちゃん)「華顔神社の売店だよ。 具合は大丈夫かい?」



(さくら)「え、えぇ… 大丈夫です。 ありがとうございます…」



(お婆ちゃん)「そうかい、それは良かった、じゃあ、お茶でも飲もうかねぇ……おい勇次やー」



(勇次)「あ?」



障子を開け、さっきの青年が顔を出した。

オレンジ色の夕陽に照らされる障子の向こう側は、お守りやストラップの売店になっている。

さくらが今いるところは、一本桜に行く途中で立ち寄った、売店の裏側と言ったところか、



(お婆ちゃん)「お茶飲むからあんたも来な」



(勇次)「えっ? 店番は?」



(お婆ちゃん)「こんな平日の夕方にお客なんか来やしないよ」



(勇次)「…分かった」

(じゃあ何で店番やらせたんだ?)



お婆ちゃんは、立て掛けてあった茶ぶ台を部屋の真ん中に置き、3つの茶碗にお茶を入れていく、

最後に真ん中へ菓子箱を置き、その場に座り込んだ。

それを確認したさくらと青年も、茶ぶ台を囲むように座り込み、お茶をすする。



しばらくお茶をすする中、さくらは僅かな可能性に賭けてお婆ちゃんへと質問をし始めた。



(さくら)「……あの、少し前に私に会わなかったですか?」



(お婆ちゃん)「いいえ、あなたに会ったのは今が初めてで、勇次以外に人には会ってないわねぇ」



当然の答えが帰って来た、

確かに、前に売店で出会ったお婆ちゃんは白髪頭だったが、髪形も違うし、体型も違うし、もとより顔が全く違う、

ならば…



(さくら)「その時他の人が売店で働いてたとか…」



(お婆ちゃん)「確かに、私以外の人も働いているけれど、今日は私しか居ないはずよ」



やはり駄目だった。

僅かな可能性に賭けたのだが、余計に現実を突きつけられただけで、

こんな妙な質問をすれば、変な娘と思われるだろうが、さくらはなりふり構っていられないのだ。



(お婆ちゃん)「さて、と言うわけで、まずは自己紹介しなきゃね」



お婆ちゃんは「ポンっ」と顔の横で手を合わせ、優しい笑顔で自己紹介始めた。



(お婆ちゃん)「おばあちゃんの名前は「田村 登三子」(たむら とみこ)この子は私の孫「田村 勇次」(たむら ゆうじ)あなたの名前は?」



(さくら)「あ…、「青井さくら」です」



(お婆ちゃん)「さくらちゃんね。 じゃあさくらちゃん、何があったか聞かせてくれる?」



(さくら)「……は、はい…」



さくらは「前にいた世界の事」

「どうやってこの世界に来たか」を自分のできる範囲で細かく説明した。

信じてもらえるとは思っていないが、事実を話す以外にはない、