「ちょっと! 聞いてる?」 「聞いてるって」 「別に過去のことだからどうでもいいんだけどさ……」 「だったら聞くなよ」 「でも! はっきりさせておきたいんだもん!」 「……」 風にあおられた髪を押さえながら俺を見上げるのは、何人目になるか分からない彼女。 だけど、初めて自分から惚れた女。 「赤い車の女の人、彼女?」 「……赤い、車?」 “赤い車”でチラつく顔は──。