右の拳を叩き込むもヤツは微動だにしない。流石はこのオレのライバルだけはある。感心しながらヤツの拳を受けた。うむ…良い拳だ。

 手が痛ぇ…おっさん何でできてるんだ。殴り付ける手が痛い。ずっとスウェイし続けているが、こんな堅いパンチもらったら一発アウトだろ。ボディにも打ち込んでいるが、腹筋が尋常じゃねぇ、化け物め。
 
「さすがは川原(かわはら)君、見事に寸で突きの威力を殺しているね」
 教頭は感心しながら現代の不良川原を褒めた。
「そうなんですか」
「彼はね、アマチュアボクシングでいいところまで行ったんですよ」
「へぇ~」
「でも暴力事件を起こしてから、あんな風にね…」
「そんな事が…」
 そう言いながら手にした携帯で写真を撮った。
「で、あの番長は?」
「彼は…」
「どうしたんです?」
「いや、彼はスゴイですよ、おそらく我が校始まって以来の優等生ですからね」
「アレがっ!!」
「全科目常に満点、センターの模試もほぼ満点」
「えーっ!!」
「ええ、格好こそあんなのですが、我が校で唯一の東大生になりえますね」

「んな馬鹿な!」
「いやぁ人は見かけによらないですね」