「そうだったんですか…」

無き母への思いと、リリーの魔法。
その二つが紅い薔薇に宿り、たとえ一時的にであれど、マリンをここまで変えることができたのであろう。

「でも、寂しくなどないわ! リリーお母様も、みんなも、貴女もいるから!」

その明るい声を静かに受け止めるように、リリアは目をとじた。

「…そのことですがマリン様」

こんな話をしたあとにこのことを切り出すのは辛かったが、心を鬼にしてリリアは覚悟を決めた。

「先ほど私は図らずも皆のマリン様への印象を聞いてしまいました。
あの……こう言うのはなんですが、それはそれは、悲惨なものでした」