「やっぱり……あのリンゴを食べてしまったのね」
――その点だけにおいては石は成功したという訳ね……
リリーは立ち上がり、フラフラと2、3歩行くとうずくまって泣き出した。
「…魔女様…」
悲痛な叫びは広い玄関ホールにやけに大きく響き渡った。
その泣き声を遮る大きな音を立てて、正面扉が開いた。
「……リリー…?」
皆が一斉に振り向くと、そこには変身も解け土や草にまみれたシャーマが立っていた。
リリーはすっと立ち上がり、つかつかとシャーマに歩み寄る。
目一杯に涙を溜めて夫を睨み付けると、勢いをつけてシャーマの頬をひっぱたいた。
「なっ――?」
「この人でなし! どうしてさっさと目を覚まさないのよ!」
そのままシャーマの胸を何度も叩き、シャーマはただ目を閉じてそれを受け止めた。


