Snow Princess ~雪の華~

マリンから見えなくなるや否や、シャーマ――いや、石の精神――は全速力で走り出した。


――なんだ…胸がざわざわする…


言い様のない不安感。
マリンがしがみついてきた時にはっきり感じた。

方角からすれば、城の方だ。

危機迫るような、妙に息苦しい感覚。

――本体に何か…?

ビリッ


「くっ!」


一瞬身体中を電流のようなものが流れた。
よろけた拍子に下草に足をとられ、地に転がる。

起き上がろうとするが、影に襲われた時と同じだ。
重力がのし掛かり、身動きがとれない。
しかし、逆に不安感が何かはっきりした。


――魔女めっ…!

今度は、更に強い電流と身体中を刃物で突き刺される感覚が襲う。

シャーマは大きく悲鳴を上げた。
しかし、悲鳴の中に嘲笑が含まれた。


「ぐっ…ククク、馬鹿が…私が、いなくなればっ…国はどうなると…思って、い、るのだ!」

『私たちが自ら歩くだけよ』


はっと顔を上げると、もう森ではなかった。
身体中の痛みも、それどころか手足もない。

自分は小さな石で、部屋の中心に浮いていた。