マリンは腕にしがみついたまま、不満そうにうつむいた。
少しして、マリンはパッと顔を上げて言った。
「またお会いできますよね? きっと!
だって私、あなたと初めて会った気がしませんの! だからっ―」
マリンは嗚咽を漏らした。
シャーマは見破られたかと思って、一瞬体を硬くする。
それからマリンの頭を撫で、ポケットの中身を取り出す。
「そんなに泣かないで下さい。いけませんよ、私のような小物に王女様が涙するなど……。
お姫様にはこのリンゴのように明るい笑顔がお似合いです。
さあ、慰めといってはみすぼらしいものですが、どうぞコレを受け取ってください」
マリンは泣きはらした目を拭い、そのリンゴを受け取った。
「では、ごきげんよう姫君。いずれまた、お会いしましょう」
シャーマはマリンが止める暇も与えずに組んだ腕をすり抜け、さっさと森の木々に消えた。


