リリーは頭を抱えて言った。
若気のいたりの時期だったとはいえ、厳しい言い付けを破ろうなど当時の自分は考えもしなかったはずなのに。
だが今、実際シャーマの手にリンゴがある以上何も言えはしない。
リリーは疑問を振り払った。
「さあ、始めるわ」
かがみこみ、魔法でロックを外すと匣の蓋はゆっくりと開いた。
中には鈍く光る神のオパールが水底で揺れている。
左手にフッと息を吹きかけ、魔力のバリアをはり、匣へ手を伸ばす。
手が石に触れると、床の魔方陣が淡く光り出した。
小さな匣の中の更に小さな石を取りだし、目の高さまで持って来ると、手を離す。
しかし、石はその高さに浮いたまま。
そしてリリーは右手を鏡に向けた。


