「『時守の匣(ときもりのはこ)』よ。
中に閉まった物の時を止めて保存出来るの」
「なるほどな。それで影が見た物って何だったんだ?」
「薬木のリンゴよ」
鏡が興味を示してほう、と言う。
「普通に食べたら間違いなく死ぬ。
本来食用じゃないから薬に加工したり、魔法をかけないと危険過ぎる代物」
「盗んだということはないのか?」
その問いにリリーは小さく首を振る。
「収穫してから数日しか保たない上に魔法で管理しているもの。盗まれたらわかるわ」
鏡は肩をすくめた。
「これは、私が昔あげた物に他ならないのよ」
「何でそんなもんあげたんだ?」
「わからないの。
ただ彼が欲しいって言ったからあげたのよ。本当はダメだったのに」


