影は大きくたわんでぎゅっと縮んだと思うと、猛スピードでシャーマに襲い掛かった。
「な、何をっ?!」
シャーマの顔の目の前で止まると、大きく広がってシャーマの上半身を包みこんだ。
中でもがくが、黒い表面はゴムのようにただ伸びるだけですぐ元に戻ってしまう。
そして、影と触れている場所から力がじわじわと奪われるのを感じ、シャーマは青ざめた。
「何をするっ! やめろ!」
叫びも虚しく、体からは力が抜けその場にへたり込む。
そのとき、思わぬ人物の声が上がった。
「待ってて! 今助けるから!」
「!?」
目の前の見えないシャーマは動きを止めた。
その体に、誰かの手が触れる。
そして、リリーの影の切羽詰った声が響く。
『やめてください! 今は来ないで! 触らないで!』
「くぅっ! ああっ!!」
その誰かの悲鳴の後、影はシャーマの体から退散した。
魔力を吸われ限界の近かったシャーマは気絶しそうになったが、持ちこたえて体を起こした。


