Snow Princess ～雪の華～

黒い景色に溶け込むその服の所為でリリーの顔だけが不気味に浮いて見える。
意思のない空ろな目がシャーマに向く。


『違います。私はただの幻影。本体ではありません』

「はっ！ 幻影ごときにこの私がっ…」

『石からシャーマに繋がる糸を逆手にとり、貴方の魔力を吸い取らせていただいています。マリンが通り過ぎるまでしばらくここでおとなしくしていてください。』

「くっ……！」


地面に縫い付けられたシャーマはすっと目を閉じて、意識を集中する。
そして、集中が頂点に達したとき、カッと目を開いた。

バチッという電撃のような音がすると、黒い影が一気に縮まり、体から圧力が消えた。


縮まった影から、無感情な影の顔がのぞく。
立ち上がったシャーマは砂を落とし言った。


「魔力を持っているのがマリンだけだと思ったか？ どうしてあの娘にあって私にないと言い切れるのだ！」


影は浮いていてシャーマを見つめるだけ。
そして、しばらくして言った。


『仕方ありませんね』