操られているという自覚のないシャーマには、罪悪感も感じない。
ただ、皮肉だと思う気持ちがあるだけだった。
そのとき、ガクンと大きく揺れて馬車が止まった。
「なんだ!?」
返事はない。
しかし御者だった部下のあわてる声が聞こえてくる。
その間にも馬車はゆらゆらと揺れている。
──馬がいうことを聞かないのか?
いったん脱出しようと外を見て、飛び上がった。
ついさっきまで山を映していた窓の外が一面の暗闇に変わっているのだ。
とにかく馬車の外に出てみると、一気に体が重く力がのしかかる。
耐えきれず、彼は地面に転がった。
「こ、れは…一体……?」
『ここから先には行かせません』
「その声……魔女かっ?!」
必死に顔だけ上げると、少し先に黒いローブをまとったリリーが浮かんでいた。


