そして、シャーマたちがマリンたち一団に近づきつつあった。
シャーマは部下の報告を受けて地図を眺める。
「ふむ…この分で行けば今日中には着けるか……」
地図をしまい、窓の外を見つめる。
なんだか木の景色が懐かしい。
平野に佇む城に山はないが、果樹園ならばあった。
しかしそこは魔女の森と称され行くことは禁じられていた。
ただ一度、結婚を前にしたときに、異様に膨れ上がった好奇心とともにその森という果樹園に忍び込んだことがあった。
疲れておなかがすいて、適当に生っていたリンゴをとり食べようとしたときだった。
「何してるのよ! 死ぬわよ!」
そう言ってリンゴは手からはたき落とされた。
その声の主がリリーであった。
リンゴは薬のために作られており、何の加工もなしに食べれば毒になるのだと大説教を食らうという出会い。
なかなか忘れられなかった。
そんなに欲しければ、といって彼女が魔法をかけ、リンゴを食べられるようにしてくれた。
そのときに、思い出の品として飾るために一つ進呈してくれたリンゴは今このポケットにある。


