厩についてから、リリアは手を止めた。
「どうした?」
(なんでも、ない)
キーファはリリアを覗き込んで睨んだ。
「なんでもあるだろ。行くこと、まだ迷ってんのか? だったら、日を延ばしてもいいんだぜ?」
(それだけはダメ! リリー様がくれたこの命、みすみす捨てるわけには行かないわ)
「? どういうことだよ?」
リリアは出来る限りの努力でキーファに事情を話した。
彼はショックを受けた顔をしたが、すぐに険しさに変わった。
「お前だけは安全に逃げろってか…だったら、死ぬわけには行かない。選択肢はないだろ?」
わかっている。しかしリリアはうつむいて首を振った。
キーファはその頬を両手で包んで顔を上げさせる。


