マリンはびっくりしてリリアを見つめた。
リリアが弱いところを見せるのなんて初めてだった。
自分はよく知らないけれど、それがきっとリリア自身のことを言っている。
それだけは、痛いほど理解出来た。
「でも…私は、何にも出来ない。出来たことなんてひとつもないの…」
マリンはうつむいて言った。
リリアは涙を拭い、笑った。
「違います。ひとつもやってないんです。
貴女の、貴女だけの役割はこれからなんですから」
「リリア…」
「ですから、帰りましょう? 戻って少しずつ役割をこなしましょう?」
リリアは立ち上がって、手を差し出す。
マリンは泣き腫らした顔で手を見つめた後、しっかりとその手を取った。
空は白み、夜明けを告げていた。


