マリンはひざの上にきれいに乗せられていた手のひらをグッと握った。
「あんな風に邪険に扱ってしまって……話も聞かずに追い出してしまいましたが、まだ間に合うでしょうか? リリアは話してくれるでしょうか?」
リリーは一瞬目を見開き、にっこりと微笑んだ。
「ええ、きっと!」
さっきまで暗かったのが嘘のようにマリンの表情が輝いた。
「ありがとうございました、お母様!私、リリアのところへ行って参りますわ!」
「マリン、ちょっと待ってくださる?」
善は急げ、とばかりに扉へ駆けていくマリンを引き止める。
リリーはどこからともなく赤い赤い真紅の薔薇を取り出して、茎を落とし花の部分だけを残すと、それをマリンの髪に挿した。
母の突然の魔術に目をまるくしているマリンの肩をポンと叩き、
「成功のお守りよ。さあ、いってらっしゃい」
と言った。
元気に駆けていくマリンの背中を見つめるリリー
「私もようやくあの子の母親になることができたかしら……」