母上がいっそ思いっきり怒鳴って私の涙がかれてしまうくらいに怒ってくれたらいいのに、とマリンは思った。
父ならばそうして怒ったはずだ。
こうして真摯に話を聞き、優しくされるほうがずっと心が重く、より罪悪感に縛られる。
「相手が何故そのような行動に至ったのか、それには理由があったかも知れない。やむを得ずやったのかもしれない。
ともすれば、確かに貴女を馬鹿にするためにやったのかもしれない。
けれども、相手の話を聞かなければそれはいつまでたっても見えてくることはないのです」
『そんな…馬鹿にするだなんてそんなことは全く──』
数刻前のリリアの言葉と、マリンの言葉に眉をハの字にしたリリアの表情が思い出される。


