さらに外交など一切なかったこの国にたいして、初めて接触を図って来た隣国と今最悪の状態にある。
これまでの外国人狩りに続き、ゴーシェとかいう大佐の無断処刑。
もちろん、隣国はその行為に激怒した。
崩れた関係を取り持つには互いが近づくしかなかった。
だというのに嫁ぐことを拒んだ。
婚礼を申し込んできた王子は亡くなり、その死因はこの国で発生したはやり病だという。
すべての礼をつくすとして、彼らは大軍を国境に敷いた。
国は終わりといっても過言ではない状態にある。
私が死んだところで彼らの怒りは収まりはしない。
それ以上に私がいなくなりあの娘が権力を持つと考えると、寒気がした。
破滅の道へ転落するのは目に見えている。
そう、マリンという王女は何一つ国に貢献していないのだ。
国のためにならない王族など、いる必要がどこにある。
シャーマがやってくるのを見て、近衛兵が玄関扉を開く。
その先には旅用の馬車が用意されている。
中の座席に腰掛け、城を見上げる。
──だから、初めて国の役に立つ仕事を強いるくらいは、当然の行いだろう……?
馬車は静かに走り出して、彼方へ消えて行った。


