国は今、未曾有の危機にある。
結界がなければ戦争などとっくの昔に起きてわが国は早々に負けていたことだろう。
それでは駄目なのだ。
何のために場所に先祖たちが来たと思っている?
争いから逃れるためだ。
死という現実を少しでも穏やかにするためだ。
人殺しというものにならないためだ。
そのためならば喜んで閉じこもる。
“外”は危険だ。出てはいけないんだ。
──なのにあの娘ときたら一体何をしているんだ…?
やること成すこと一つひとつが国のためになどなりはしない。
財産を食い潰し、贅沢三昧。
貴族たちとの会合の場にいきなり飛び込んできて泣き出して会議はとんだ。
初対面の貴族に対しては基本無礼を働き、交渉は一気に崩れ、結果鉱山の所有権は一つとして残らなかった。


