リリーは部屋に入ろうとした体をもと来た方へ向け、シャーマを探した。
彼の自室に行けば会えるだろうと思い、足を向けた。
トントン
彼の部屋のドアをノックする。
返事はない。
リリーはいぶかしんで、ためしに開けてみた。
扉は、あっけなく開く。
開いたという事実に少し驚きながら、リリーは部屋に足を踏み入れた。
王の名にふさわしく、豪華なつくりである。
何度か入ったことのある部屋だが、リリーはなんとも言えぬ違和感を感じた。
「あっ!」
違和感の正体を見つけてリリーは小さく声を漏らした。
注意深く見ないとわからないが、壁に薄く溝が入っている。
そしてその壁の前だけ、家具類が移動させられているのだ。
とにかくモノは試し。
魔法の師匠に教わった言葉を思い出し、リリーは力をこめて壁を押してみた。


