議論の末、マリンには家事をやらせないことになった。
その代わりふもとの村まで降りて何か仕事を探すことになった。
それなら、と意気込んで下ったマリンだったがまず山を降りるだけで疲れ、村に着いたときにはもうへとへとだった。
「はぁあ…もう、歩けない…」
マリンは近くにある丸太に腰掛けた。
当てもなく周りの景色を見回してみる。
山や森にある木々は青々と茂り、これから盛りを迎えるためにいっぱいに光を浴びて太陽に向かって伸びている。
その枝を細かく走り、囀りを奏でる小鳥。
それらと戯れる小動物。
城の整備された庭の中ではあまり見られない自然な奔放な姿。
首をまわせば、畑仕事にいそしむ人々。
泥にまみれても、地面にしゃがみこんでいる。
その傍らを、わらをいっぱいに乗せた手押し車を押すものが通る。
城の中で暮らしていては一切見られない姿。
マリンは不思議な気分だった。


